2018/3/7

各分野で活躍する修了生たちが、IBAを語る
Part2

企業経営戦略コース座談会 Part2

2017年11月21日 関西学院大学 大阪梅田キャンパス

片山 健さん (2007年3月修了)阪急電鉄株式会社 勤務
大西 美江さん(2007年3月修了)個人事業主
森田 義樹さん(2011年3月修了)株式会社大丸松坂屋百貨店 勤務
斎藤 明穂さん(2015年9月修了)桃谷順天館グループ 勤務

関学IBAでのMBA取得後、さまざまな業種で活躍する修了生4名をお招きし、修了後のキャリアと当時の思い出話を伺いました。

企業経営戦略コース修了生の皆さん 左から 大西さん、斎藤さん、森田さん、片山さん

はじめに、みなさんの現在のお仕事について簡単に教えてください

片山 阪急電鉄株式会社で、都市交通コアの経営管理を担当しています。年度予算や中期経営計画の策定方針をコア事業トップとともに決定するのが主な仕事です。

森田 大丸松坂屋百貨店に勤めています。現在は神戸店で、旧居留地エリアにある各テナントの運営管理の業務に就いています。

齋藤 私は修了後に転職しまして、今は桃谷順天館という老舗の化粧品会社で海外、主に中華圏向けに営業活動を行っています。

大西 20年以上勤めた製薬会社を昨年退職し、独立しました。「ビジネスパーソンのためのサードプレイスを創ること」を目指し、その事業化に取り組むとともに、パラレルで企業向けのコンサルティング業務を請け負っています。

「学位取得ではなく、プロセスに意味がある」

みなさんが考えるMBAの価値とは何でしょうか?

片山 MBA自体に価値があるかと言われれば、少し違うかも知れません。あくまで経営を体系立てて勉強できる2年間に価値があると思います。勉強そのものは独学でもできるんでしょうけど、先生や同期、先輩との会話から生まれる発見はここでしか得られないですよね。

つまりMBAそのものというより、そこへ向かうプロセスに価値があった?

大西 私の場合、「長期にわたる医薬品開発において、どうすれば市場のニーズを汲み取った製品開発ができるのか」というテーマを持ち入学しました。一般的にはマーケティング分野のアプローチを思い浮かべますが、敢えてそこは固定せず、IBAで提供される様々な分野の授業の中で模索しました。そこで「ファイナンスとテクノロジーマネジメントの融合」という入学前には考えもつかなかった視点にたどり着いたんですね。これがなかったら、事業性評価という後の私の専門性にたどりつかなかった。

森田 百貨店という小売の世界で、「自分とお客様」という関係性を軸に仕事をしてきました。それまでB to Bの視点を持つことがあまりなかったので、違う関係性の中で仕事をしている人たちの考えに触れられたのが良かったですね。例えば自信を持って発表した課題でも、予想外の視点から意見がとんでくる。あの足元をすくわれる感覚は、仕事だけでは味わえない経験でした。

入学動機も背景も違うからこそ、学びの過程でそれぞれの意味を見出せたということですね。
何か印象に残っている授業はありますか?

片山 大丸の奥田先生(元大丸代表取締役会長・奥田務氏)の授業は良かった。現役の経営者の話が聞ける貴重な機会でした。

大西 マイナスからスタートして、大きく利益を上げられて。経営者の苦悩と挑戦の意思決定をリアルに聞くことができましたよね。

片山 経営戦略もマーケティングも、ファイナンス的なところも、すべてが網羅された結果としての経営という感じで。あれは録音しておけばよかった!

森田 当時の社員でも聞けないような話をきっとされていたんだろうと思いますね。

「MBAはコミュニケーションツール」


では、MBAを取得したことで実務に活かされていることがあれば教えてください

森田 たとえばケーススタディで習った事例って、今の時代に置き換えたときに必ずしも勝ちパターンじゃなかったり、最終的な解ではないこともあるじゃないですか。それでも、「型」を学んだというのは大事だと思うんです。違う部署へ行ったときにも、まずは「型」で見てみるということを知っているのはとても役に立ちました。

大西 そうですね、ケーススタディもフレームワークもひとつの共通言語というか。事業性評価という仕事でも、同業者にはMBAホルダーの方が多いんですよ。話しやすく感じるのは、経営に関わる共通言語があるからですよね。

森田 東京へ転勤したときM&Aのチームだったんですが、周りはやはりMBAホルダーが多くて。必要な数字やアプローチを導き出すうえで、かなり助けられました。

片山 私は一時期IRの仕事と資金調達の仕事をしていたので、銀行の人や投資家と話すときに共通言語があることで会話しやすかったですね。経営者ではなくても、経営のものさしを持っている人たちなので。

齋藤さんは海外への営業をされていますが、国際的な視点ではいかがですか?

齋藤 うーん…私の場合は、コミュニケーションの面ですね。駆け引きというか、自社が不利にならないように違う言語を使って相手を論破する力というのは、IBAで鍛えられたと思います(笑)。やはり日本とは感覚が違うので、一度頭の中で整理して、裏の裏まで読んで相手に伝えるというコミュニケーションは、必要ですね。

「なぜ、起業するのか」

大西さんはMBA取得後10年で起業されたわけですが、何かきっかけはあったのでしょうか

大西 前職では、提案企画を実施する機会に恵まれ、プロジェクトを率いたり、新たな仕組みを作ったりしてきました。そしてある時点に来た時、「できることはやり尽くした」と思えた、というのが一つ。もう一つは、人生100年時代になり、より自分らしく生きることを優先する「第二ワーク期」があってもいいのかなと考えたんです。それで人生を振り返り、「こういうとき自分は生き生きしていたな」ということを具体的に挙げ、それらを抽象化してみることで、「自分のあり方」を認識できたんですね。それがきっかけです。

なるほど。他のみなさんは起業に対してどのような考えをお持ちですか?

片山 正直、ハードルが高いとは思います。そもそも起業を見据えて入学した人とそうでない人で、かなり考え方が違うでしょうね。ただ同期生には、社長や既に起業されている方も多かったです。

大西 そうですね、私も自分が起業するとは当時思ってもみなかったです。起業するかどうかは別として、起業家精神を持つことは大事ですよね。起業家精神を持って、会社の中で新しい提案をしていくことは、MBAホルダーとしてすべきことのひとつだと思います。

森田 新規事業提案の機会は会社の制度としてありますね。色々なアイデアが出るんですが、「それでいくら儲かるのか?」という根拠がセットじゃないと成立しない。そこが難しいところですね。

大西 事業性評価の中でも、新規事業の事業性というのは大きな課題です。新薬の場合でいうと、開発の初期段階で、こういう作用はあるけれど具体的にどんな患者さんに使えそうか設定でないような場合、定量的に示すのは非常に難しい。それでもこれまでの知識を活用し粗くても仮説を立て、初期に設定した仮説を時間軸でマネージしていきますが、新規事業の最初の投資意思決定時には仮説を設定することすら難しい。会社を動かすためには、異なる視点を取り入れた方法も必要ではないかと感じています。

森田 あと、企業イメージの枠内からはずれた提案は歓迎されないということもあります。世間が思う企業イメージに対してその事業はどうなのかと。ニーズやマーケットはあっても、そこがブレーキになることはあると思います。

大西 儲かるのか?の前に、企業理念やブランドイメージといった重要な定性項目がまず判断軸になる。それは方向性を決める最初の意思決定ですよね。

齋藤 新規事業って、何年くらいの計画で出されるんですか?

大西 業種によって違うと思いますが、製薬企業の新薬開発だと10〜20年先までを見据えます。臨床試験だけでも3〜7年、その後審査期間を経てようやく発売と、長期間を要するので、必然的に不確実性が高くなる。この間のリスクマネジメントが重要ですね。

齋藤 私が営業している中華圏の代理店さんは起業家の方が多いんですが、何かの事業で成功して、その資金をもとに違うビジネスをやっているケースが多いです。判断するスピード感とか、事業に対する考え方が日本とは違うように思います。台湾なんかは、10人に一人は社長ですね。ほとんど会社勤めせずに起業するか、ある程度キャリアを積んでから独立するか、あとは副業をやっている方が多い。

片山 「今これをやったら儲かる」という視点で起業や新規事業をやるのもいいんだけど、魂の部分がないとダメですよね。「なんのために」がないと。自分がどうしてもやりたいことが既存の会社の仕組みにはなくて、それでもこれは世の中のために必要だと思う人が起業するのは大いに賛成です。

大西 そうですね、「なんのために」が大事ですね。逆に「なんのために」が明確であれば、「何をやるか」は後でもいいと思っています。企業ではなかなか難しいと思いますが。

「サードプレイスを持つということ」

ありがとうございました。最後にこれからIBAに入学する方へのメッセージをお願いします

森田 仕事で悩んだとき、会社の人に相談するとほんの数パーセントでも会社のしがらみが付いてくる。でもIBAの同期生には100パーセントで話ができるんですよ。ただ悩みを聞いてほしいだけじゃなくて、やりとりをして解決に持っていきたいとき、すごく助けられましたね。同じような境遇にいて、目線合わせができる人がいるというのは、財産だと思います。

片山 「サードプレイス」を作るということなんですよね、ここに入学することは。会社でも家でもない、もうひとつの居場所。刺激をもらえるし、共通言語で話せて卒業しても付き合える仲間に出会える。

齋藤 私が通っていた頃は女性が多くて、私を含めて子どもがいる人も結構いました。仕事も忙しくて大変だったけど、時間は何とかなるもんです。子どもも勉強する自分の背中を見て、理解してくれていたみたいです。時間の使い方も鍛えられて、修了後はいろんなことが回せるように。ワンランクアップした気分です。

大西 IBAは、アカデミックと実務のバランスが私にはとても理想的でした。自らの実務経験を思い浮かべながら、今日聞いたことが明日使えるという感覚で勉強できましたね。さらには、研究したテーマがベースになって新たな業務に発展したり、仲間との対話が起業のきっかけになったり…IBAに来ていなかったら、今の私はなかったと思っています。