2016/8/26

東京の2020年

山本昭二教授 ビジネススクール(BS)

地方創生という言葉に乗って地方がもっと自律的に発展するという可能性を高めることの重要性が謂われている。その一方で、東京と大阪というネタは大阪人だけが好きな話しであって東京から見ると大きな地方でしか無くなっているのも残念ではある。

 経営戦略研究科の修了生も東京で活躍している皆さんが多くなってきており、東京での研究会ももっと活性化しなければと思っている。私が仕事の関係で、かなりの時間を東京で過ごしているということだけではなく、2020年に向けて大きく変化しようとしているこの街で何が出来るのかはかなり重要なことだと思っているからである。

 東京は日本の首都というだけでは無く、グローバルな街としての性格を強く持っている。グローバル化という名前の米国化の流れにもかかわらず、世界の幾つかの都市は共鳴しながら成長を続け独自の位置づけを保っている。

 いくらグローバル化が進んでもそれほど世界はフラットにならず、幾つかの特異点をもちながら突出した中心を複数持ちながら変化をし続けている。それぞれの特異点は強い象徴性を持っており、グローバル経済での存在意義を主張し続けている。

下の東京駅の写真は100年前の辰野金吾設計を元にして改築された現在の姿を示している。3階建てに建て替えられた駅舎は、戦災で破壊される前の姿を取り戻している。中に入る東京ステーションホテルも、東京駅のモニュメントとしての重要性を反映したものに変わっており、建物の中にはこの場所にまつわる写真が数多く掲げられている。
山本先生メッセージ写真.jpg

しかし、そこには戦前には無かった新幹線や地下を走る各線、駐車場があり、免震構造である。そして周辺の高層ビル群に囲まれている。皇居の周辺に高層ビルを建てることの是非で問題なった東京海上ビルの事件の記憶も現在では薄らぎ、ここから皇居を眺める風景はすっかり変わってしまった。

 JR東日本は、この駅の上の空中権を売り渡すことで改築費用を捻出したが、その結果丸の内は高層ビル群に占領され、ロラン・バルトが「空虚な中心」と評した皇居は、上京した乗客からは少し見にくいものとなった。

この様に象徴性を利用しながら、街を発展させていくダイナミズムは大阪がもっと学ばなければ行けないことである。経済のサービス化、インターネットの進展は、経済や人の流れを変えてしまっている。東京と地方の経済格差は埋まるわけでは無いが、それを緩和する方法を考えないとますます東京への集中は止まらないと感じている。

 2020年に向かってますます加速するグローバル経済に関わっている人々とそれ以外の人々が混在している街の有り様を肌で感じている修了生の皆さんが、どの様な感想を持っているのかを私たちのビジネススクールにも還元して頂ければと思っている。