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2016/7/26

今、担当している科目(組織管理)の教室から

加藤雄士教授 アカウンティングスクール(AS)

今日は講義の話を書かせていただきたいと思います。
現在、組織管理という科目を担当しています。この科目では、組織管理に関する理論習得と組織開発に関する実践体験およびその省察という2本柱で講義を展開しています。その科目の最近2回の講義の内容をもとに書かせていただきます。

ゲスト・スピーカーによる講義。この講義では毎回、座席配置が変わります。この回は、机を取っ払い馬蹄型に椅子を並べて講義が展開されました。

【ビジネス・スクールの学生が羨ましい】
  まずは、理論習得に関する話からです。テキストは有斐閣アルマの『組織論』を使っています。受講生が担当章を決めて発表してくれますが、前回、ある受講生が、「ハーバード白熱教室」のマイケル・サンデル教授に扮して発表をしますと宣言してくれました。そして、サンデル教授ばりに受講生に問いかけて講義を進められました。「加藤先生も今日は、受講生になっていただきますので、加藤さんと呼ばせていただきます。」と言われましたので、私も受講生の立場で参加しました。個人的な感想ですが、講義がこんなに楽しかったとはと驚きでした。あとで振り返って思ったのですが、教員という立場でなく、受講生の立場ですので好き勝手なことを発言できます。これが痛快で、ビジネス・スクールの学生になったかのようでした。ビジネス・スクールの学生はこんなにも楽しいのかと発見した思いでした(笑)。教員は思いつきでは発言できませんが、学生は思いつきで発言できる、というのは私のビリーフでしょうか?
 例えば、組織の目標について、①過去の当社の数値との比較で決める、②業界の標準とかベンチマークとする企業の数値を参考に決める、③あくまでも当社のあるべき数値として決める、の3つについて、発表者の受講生が問いました。
 私は税理士の実務家でもありますので、自分の仕事の体験から少し話しました。中小企業相手では、まず手っ取り早く前期対比で比較する、前期より良ければ良いですねと褒める、悪ければ原因をクライアントと一緒に考える(しかし追求し過ぎない)、というようなやり方をし、できたら、②とか③で目標と現状とを比較したりします。とはいえ、目標数字と比較している時点で、その会社はかなりしっかりしている会社といえるというのが現状です。
 中小企業はそんないい加減なのかと思われるかもしれませんが、大企業だっていい加減な目標の立て方をしていることはよく聞きます。毎年、事業会社の財務パーソンを対象に財務計画の講義をしていますが、事業会社の事業部の目標でも「垂直的にも水平的にも様々な調整が行われて、最後におりてくる事業部目標は根拠のない、なんでこんな数字になったのか分からない数字になっている。」という話をよく聞きます。この組織管理の講義時も、その話をすると、ある事業会社に勤める学生の方は納得顔で頷いていました。
 あるいは、会計大学院には、社会経験のない純学生もいます。そういう学生には社会での実務の話は分かりませんので、「要するにA君の場合、第1Qの成績と比べてA+の数が増えたからよかったと考えるか、受講生のスコア平均値より1上回っているからよかった(あるいは、ライバルのB君と比べて評価が高いから良しとする)と考えるか、あくまで全てをA以上とするという理想の姿を目標とするのか、何を目標として学生生活を送るのかということだよ」といった、例え話を作って気楽に話しました。
 このように思いつきで話して、それに対して、他の学生が違う意見を言ってくれたりして、学生気分に浸れました。

【ゲスト・スピーカーをお呼びしての実践・体験講義】
  その前の回の講義は実践的に組織開発の手法について学ぶというテーマでした。ゲスト・スビーカーをお呼びして、ファシリテーションとコーチングを活用した組織開発の実践事例の紹介をしていただき、具体的に学生にファシリテーションの指導をしていただきました。
 お呼びした実務家のコンサルタントの先生は、自分の価値観を脇に置いて、人の話を聴くことが大切だと強調されました。また、自分が話しているときに、相手が聴いてくれている姿に大きな影響を受けていて、話すあなたも、話の内容を変えているのではないかと問いかけました。熱心に聴いてくれていれば、もっと話そうと思えるし、相手が聴いてくれていないと感じれば、そそくさと話を打ちきるのもその一例です。そして、話をどれくらい真剣に聴いているかは無意識のうちに身体のどこかに現れます。聴いているふりをしても、聴いていないことはばれてしまいます。そして、聴いている人は自分の価値観で他人の話を聴いていて、その価値観がどこからくるかを理解しておくことが相手の価値観を尊重するために大切だとも話されました。
 その回の授業を終えて、受講生は、仕事の場や生活の場で人の話を聴くときに、聴き方が変化し、人間関係も変化したと教えてくれました。
 このように理論と、実践とを交えながら講義を展開する、それが会計大学院における組織管理の講義です。過去にもこの科目を受けて刺激を受け、自社の中で新たなチームを作ることを経営者に提言して、新組織を作り、チームリーダーとして活躍されている方もいます。あるいは、この科目での刺激に影響を受けて、卒業後、取り組んだ仕事で、ある国の大統領賞を受賞しした方もいます。理論と実践を織り交ぜた講義が少しでもこうした学生に影響を与えることができたとしたらこんなに嬉しいことはありません。
 このように理論と実践を交えた科目としては、多にも秋学期に開講する人材開発論という科目もあります。実践を通じて学びますので、講師の私も毎回たくさんのことを学ばせていただいています。
 IBAを終了されたみなさんも、また大学院の教室に戻る時間を持たれてもよいかもしれません。そこでは理論だけでなく、理論と実践とが融合した創造的な場が待っているかもしれません。