2017/10/19

関学IBAのファイナンスプログラム

1602年にオランダで設立された東インド会社は、近代的株式会社の起源だといわれています。その仕組みは基本的には変わらず現代に受け継がれています。当時、ヨーロッパにとってインドとの貿易は大きな利潤の生むものでした。しかし、船で長期航海に出ることはとてもリスクの高いことでもありました。ある時、天才的な発想が生まれます。多くのお金持ちから出資を募り、お金を出し合って船を買い、船員達を雇ったらどうか、と考えた人がいたのです。お金はないが、情熱ある船乗り達が命を賭けて航海に出て、成功報酬をもらう。出資者は、途中で船が沈没したり、積荷が盗まれたりすると出資金を失いますが、出資した以上の金額は失いません。リスクを負う反面、無事に航海から帰ることができれば大きな利潤が得られる。こうして、リスクを取った見返りに大きなリターンを得ることができる仕組みが生まれたのです。この「株式会社の発明」はその後大きな変化を社会にもたらしながら、現在に至っています。

ファイナンスとは、こうした仕組みを理解するための一連の理論体系です。どの程度のリスクに対してどういったリターンが期待できるのか。1602年から始まった、リスクに報いる仕組みは、その後多くの学者の研究対象となり、リスクとリターンに関する理論の数々はノーベル経済学賞を4つも授賞しているのです。この意味では、現代のビジネス社会を理解するためには、ファイナンス理論の習得は必要不可欠と言えるでしょう。多くの欧米のビジネススクールでファイナンスが必修となっているのには、それが資本主義社会の基盤になっている理論体系だからです。

関西学院大学ビジネススクールのファイナンスプログラムでは、こうしたコアとなる理論を中心として、レクチャー、ケースディスカッション、演習等を通じて、必要な体系的知識を学びます。欧米のビジネススクールで習得するファイナンス理論の主なものは全て関西学院大学ビジネススクールで学ぶことができますので、卒業後は世界のMBAを出た人たちと共通言語を使えるようになります。また、業界の最前線で活躍しているゲストを招いて、実務に理論をどう活かしているのか、現実と理論はどう異なるのか、熱く議論する場も儲けています。チャレンジ精神に満ちた皆さんの参加をお待ちしています。

岡田 克彦

博士(経営学)神戸大学 MBA(ワシントン大学)

モルガン・スタンレー・ニューヨーク、UBS証券東京、シンガポールのヘッジファンド共同創業者を経て現職。AIを使った証券投資モデルの開発が主な研究対象。これまで、行動経済学会会長、公認会計士第2次試験委員、雑誌『行動経済学』編集委員長などを歴任。現在、証券アナリストジャーナル誌編集委員、雑誌『行動経済学』編集委員、証券アナリスト(CMA)資格試験委員、経営財務研究学会副会長。実務では、Paypay アセットマネジメント社顧問、ヘッジファンド運用会社K2Q Capital Management, LondonのHead of Researchを兼務。近著に、『ファイナンスデータ解析』(朝倉書店、編著2022年)、『ヤフーのビッグデータとAIが教える21世紀の投資戦略』(講談社、2018年)、『人工知能学大辞典』(共立出版、分担執筆2017年)。論文はPacific Basin Finance Journal, International Review of Finance他などに多数公刊。

主な担当科目:コーポレート・ファイナンス基礎/応用、マーケットデータ解析