2017/10/19

職業会計人になるために、法律の勉強なんて必要ないと思っていませんか?

あらゆる組織に会計は必須ですが、一番大きな組織である国のガバナンスは憲法41条以下、会計は憲法83条以下に定まっています。現代社会に欠かせない株式会社という組織は会社法に定められています。会社法は株式会社・合名会社・合資会社・合同会社の組織、運営、管理を定めている法律です。株式会社のガバナンスは会社法295条以下、会計は431条以下に定まっています。よって、株式会社の会計を学ぶには会社法の知識、加えて上場会社には金融商品取引法の知識が必要です。

地方自治体の会計は地方自治法に定まっていますが、公法人が行う商行為については原則商法に定めるところによりますので(商法2条)、自治体職員の方は商法の知識が必要です。商法の一般法が民法です。財産権のうち物権・債権は民法に定まっていますが、知的財産権は特許法や著作権法などの知的財産権法に定まっています。知的財産権の評価方法は会計分野において議論のあるところです。信託を用いた金融商品の多様化、民事信託・公益信託のニーズの高まりにより、信託法の理解も会計分野に欠かせません。取引先等が倒産した際、対処方法を間違わないためにも、破産法・民事再生法などの倒産処理法の理解も必要です。

日本特有の会計制度であるトライアングル体制(商法・会社法会計、金融商品取引法会計、法人税法会計)はグローバル化の影響等により崩壊しており、このような理解も判例研究を通して必要です。租税法分野では、法人税法の他に所得税法・消費税法の知識は必須です。

経営戦略を決定する場面では、会計・税務・法律の知識が求められます。関学ASでは、上記の法律科目をすべて開講し、法律面においても法律の専門家と互角に仕事が出来る職業会計人の育成を目指しています。

上記以外に、初学者には企業法基礎企業法租税法基礎、公認会計士をめざす方には企業法の短答式試験の底力をつけるために企業法要説、企業法・租税法の論文式試験の素養をつけるために企業法課題研究租税法課題研究、企業の会計プロフェッションをめざす方には会社法事例研究、租税法事例研究を開講しています。

企業に関する法律は、頻繁に改正が行われます。現行法の知識だけではなく、修了後も自立して学ぶことができる力をつけてもらうことを心掛けています。

関学IBAアカウンティングスクールで、法律に強い職業会計人を目指しませんか?

岡本 智英子

慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程民事法学専攻単位取得満期退学。高知大学人文学部助教授等を経て2007年より現職。ベルリン・フンボルト大学法学部客員研究員(2015年9月~2016年9月)。日本私法学会理事(2019年10月~2021年9月、2022年9月~2023年9月)。専門は商法、会社法。株式による資金調達における株主保護のあり方について、ドイツ会社法がアメリカ会社法とどのように対峙あるいは受容してきたのかについて研究中。著書に『募集株式発行の効力論』(税務経理協会、2007年)、『会社法の基礎(第2 版)』(法律 文化社、2021年:共著)、『民法とつながる商法総則・商行為法(第2版)』(商事法務、2018年:共著)がある。

主な担当科目:企業法、商法、会社法、企業法課題研究